『海獣の子供』に纏わる第一の証言

『海獣の子供』という世界と物語を生み出した原作者の五十嵐大介と、映画『海獣の子供』の主題歌を書き下ろした米津玄師。2016年に開催された「ルーヴル美術館特別展『ルーヴルNo.9 ~漫画、9番目の芸術~』」への参加をきっかけに出会ったふたりの対話は、『海獣の子供』の舞台のひとつ新江ノ島水族館「相模湾大水槽」を臨みながら重ねられた。海の生物たちの気配が渦巻く空間へ、穏やかに浮かんでいく『海獣の子供』に纏わるフラグメンツ。時を経て巡り往く足跡の交錯が、フィルムのきらめきをより鮮やかに反射させる。

取材・文/ワダヒトミ 撮影/太田好治 協力/新江ノ島水族館

『海獣の子供』と ふたりの出会い

18のころ、都会の本屋で

眼差しの豊かさ、やさしさ

『海獣の子供』と 原風景

「海」は、畏怖の対象

山の文化と海の文化の違い

『海獣の子供』と 「海の幽霊」

海辺にぽつんと椅子がひとつ

音楽と絵、つかず離れずの距離

「海の幽霊」のジャケットイラストは、五十嵐さんによるものになるんですよね。

米津それが本当に光栄で。

五十嵐(幾枚かの色つきラフ画を並べながら)こんな感じでいくつかラフを描きながら、仕上げていきました。

米津うわ、すごい。「すごい」しか言葉がでません。胸が熱くなります。月並みですけれど、18のころの自分に教えてあげたいですよ。

五十嵐でも、米津さんって普段はご自身でジャケットのアートワークを手がけられてますよね。

米津そうですね。他の方に描いていただくのは今回が初めてになります。

五十嵐ですよね。なので、僕で良いんだろうか、米津さんが描かれたほうがいいんじゃないかって思いながら描いてました。

米津いやいやいやいや、そんなバカな。

五十嵐そういう意味では、僕も楽曲との距離感みたいなものをとても考えました。音楽に絵をつけたのも初めてでしたので、つかず離れずの位置を見計らったというか。イメージを限定せず膨らむようにしたいけれど、離れすぎちゃってもまずいし、どうしましょう? と迷いました。ずっと「海の幽霊」の楽曲を流しながら、いろいろと描いて、最終的に「足跡」と「幽霊」のイメージに固まっていきました。ただ、この絵は、どちらかというと夜の雰囲気があると思うのですが、曲を聴いていると誰もいない昼間の海辺の情景も浮かんできたりもするので、ぜんぜん収まりきらないなあとは思いつつ。なので、昼バージョンは米津さんが描いてくださったらいいんじゃないかな、なんて(笑)。でも本当に、それも見てみたいです。

『海獣の子供』 という映画へ

世界が一気に立ち上がった

早く、大きなスクリーンで